それ、私に恥かかせてるの分かってる?
いいですよ、そんな高いの、と言った。 言った瞬間、彼女の手が止まった。メニューを閉じて、こっちを見て、静かに言われた。 それ、私に恥かかせてるの分かってる? 二十歳。入店三週間。何を怒られているのか、本当に分からなかった。
遠慮して、怒られた
その日、俺は良いことをしたつもりでいた。若造が高い酒を入れさせるのは悪い、と。 彼女の側から見ると、自分が出そうとしたものを、目の前で押し返されたことになる。しかも人の目がある店内で。 あとで先輩に言われた。受け取れ、と。遠慮は謙虚じゃない、相手の好意を否定してるだけだ、と。 かっと熱くなった。反論できなかったから、余計に。
受け取れないのは、断ることと同じ
年上キラーと呼ばれる男の特徴を調べると、甘え上手とか素直とか出てくる。半分は合ってる。ただ、順番が違う。 甘えるのが上手いんじゃなくて、もらうのが上手いの。差し出されたものを、まっすぐ受け取れる。 これができない男は、年上の女性から見て扱いにくい。何をしても押し返されるから、やることがなくなる。
中身は、受け取り方の上手さ
甘え上手より、もらい上手
年上の女性が若い相手に向ける気持ちって、渡したい、が先に立つことが多い。奢りたい、教えたい、気にかけたい。 そこで、いいですいいです、を繰り返すと、渡す先を失う。 「遠慮されるのが一番冷める。私が悪いことしてるみたいじゃん」 店の常連に言われた言葉。この一行だけで、年上キラーの半分は説明がつく。
受け取ったあと、何を言うか
もらい方には続きがある。受け取って終わりじゃない。 その場で、嬉しい、と言う。これは全員やる。 差がつくのは次に会った時で、この前のあれ、ずっと使ってます、みたいな一言を置けるかどうか。渡したものが生きてる証拠が返ってくると、渡した側は、また渡したくなる。 覚えていることと、受け取ることは、たぶんセットなんだよね。
割り勘に固執する男が嫌われる理由
年上と食事に行って、毎回きっちり半分払おうとする男がいる。誠実に見えるでしょ。 相手からすると、対等でいたいという主張が毎回突きつけられてる状態。年収も立場も違うのに、無理に横並びにされる。 バランスの取り方は割り勘じゃなくてもいい。今日は出してもらったから、次は俺が店を探しますね、でいい。金額じゃなく、手間で返す。 金額で並ぼうとすると、いつか無理が来る。手間なら続く。
年上扱いをしない、というだけで違う
年齢を話題にしない
年上の女性にとって、年齢は日常のあちこちで刺さってる話題なの。仕事でも、家族からでも、街の広告からでも。 そこに触れてこない相手といる時間は、ただ楽。それだけで居心地の良さになる。 何歳ですか、と聞くのも、いくつに見えますか、に乗るのも、若く見えますよ、と返すのも、全部その話題を続けてる。触らないのが一番効く。
大人だね、は褒め言葉になっていない
年上なのに可愛い。年上っぽくない。落ち着いてますね。 褒めたつもりの言葉が、全部、あなたを年上として見ています、という宣言になってる。 「年上扱いされないのが一番楽。大人だねとか言われると、線引かれてる感じするの」 これも現場で出た言葉。褒めより、扱わないほうが効く場面って、けっこうあるんだよ。
敬語を混ぜる
完全なタメ口は、舐められる。完全な敬語は、距離が固定される。 売れてた子たちは、混ぜてた。基本は敬語で、感情が動いた瞬間だけ崩れる。え、それマジですか、が、え、マジで、になる瞬間。 崩れた一言が、素が出た合図として届く。狙って崩すと不自然になるから、感情が動いた時だけ、というのが条件。
弟枠から出るための、一回
検索してる人の本当の悩みは、たぶんここでしょ。可愛がられてはいる。でも男として見られてない。
弟枠は、守られる位置
弟として扱われている限り、こちらは守られる側にいる。心配され、教えられ、面倒を見られる。居心地はいい。 ただ、守られる側にいる人を、恋愛の相手として見るのは難しい。位置が固定されてるから。 そこから出るには、一度だけ、守る側に回った瞬間を作るしかない。
全部やると、背伸びに見える
ここで多くの人が間違える。急に全部リードしようとする。店を決めて、会計を持って、荷物を全部持って、意見を通して。 やりすぎると、無理してるのが透ける。年上の女性は、無理してる若い男を何人も見てきてるから、一瞬で分かる。 必要なのは全面的な転換じゃない。一回でいい。
一度だけ、怒るか、守るか
具体的には二つ。 彼女が理不尽な扱いを受けている時に、間に入る。 あるいは、彼女が自分を雑に扱っている時に、一度だけ真面目に怒る。そんな言い方しないでください、みたいな。 どちらも、守られる側から一歩出る動き。しかも一回きりだから、背伸びに見えない。 「弟だと思ってた子が、一回だけ怒ってくれたことがあって。あれで見方が変わったんだよね」 そう話してくれた客がいた。何を怒ったかまでは覚えてないらしい。怒ったという事実だけが残ってた。
店で聞いた本音
奢らせてください、はうざい
「奢らせてって言われるとうざいの。でも、ここは俺が出しますって一回だけ言われた時は、ちょっとぐらっときた」 違いが分かるかな。 奢らせてください、は許可を求めてる。まだ守られる側にいる。 ここは俺が、は決定を告げてる。一瞬だけ、位置が入れ替わってる。 金額の話じゃないの。一回、自分で決めたかどうか。
甘えられるのは、嫌いじゃない
念のため書いておくと、甘えること自体を嫌がる人は少なかった。頼られるのは嬉しいと言う人のほうが多い。 線があるとしたら、頼るのと、押し付けるのの間。 悩みを相談するのは頼る。悩みの解決を丸投げするのは押し付け。前半だけやって、決めるのは自分でやる。この形だと、何度でも受け止めてもらえる。
覚えている、という一点
顔でも話術でもなかった
年上の客がしっかりつく子には、共通点があった。顔がいいことでも、喋りが上手いことでもない。 覚えてるの。前に言ったことを。 三ヶ月前に一度だけこぼした職場の愚痴、飼ってる犬の名前、行きたいと言っていた店。 そういうのを、ふとした流れで出す。あの犬、元気ですか、って。
記憶が、年齢差を消す
なんでこれが効くか、しばらく分からなかった。 たぶん、年上の女性は、若い相手から真剣に扱われることを期待していないんだと思う。どうせ遊びだろう、どうせ通過点だろう、と最初から少し引いてる。 覚えていることは、その予想を裏切る。真剣に見ていた証拠が、記憶の形で出てくるから。 テクニックとして書くのは気が引けるけど、これが一番効いてたのは事実。というか、覚えようとして覚えたものは、たいてい出てこない。本当に興味があった話だけが残る。
年上に嫌われる、若い男の型
若さを武器として出してくる
体力、徹夜、朝まで遊べる。この手の自慢は、年齢差を強調するだけ。 強調された側は、置いていかれた気分になる。武器として出した瞬間に、それは相手を刺す。
将来の夢を語りすぎる
夢を語ること自体は悪くない。量の問題。 何年後にこうなりたい、という話が長いと、年上の女性は自分がその未来にいない可能性を計算し始める。年齢差がある関係ほど、未来の話は不安を呼ぶ。 語るなら、来月と来年くらいの距離感でいい。
他の女の話で、嫉妬させようとする
若い女の子にモテてる話をして、価値を上げようとする男がいる。 効かない。むしろ、この子は子どもだな、と確認させるだけ。 年上の女性は、そういう手を過去に何度も見てる。見透かされたうえで、優しく流される。流された時点で、恋愛の相手からは外れてるよ。

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