夜の店で人を見てきた中で、一番読めなかったのがこのタイプ。
褒めても、返ってこない。喜ばないわけじゃない。ただ、こっちが期待した形では返ってこないんだよね。
媚びないのは態度じゃなくて、値引きをしないこと
愛想がないのとは、まるで別の話
媚びない人は、普通に笑う。礼も言う。感じよく話す。違うのは、相手の機嫌を取るために自分の基準を下げないという一点だけ。
つまり、表面の温度じゃなく、内側の値段設定の話でね。愛想の有無とは無関係。ぶっきらぼうな人が全員媚びてないかというと、全然そんなことない。愛想がないだけで、内心では思いきり相手の顔色を見てる人もいる。
媚びられない人と、媚びない人の違い
これも分けたほうがいい。
媚びられない人は、やりたくてもできない。可愛く甘えるという動作に強い抵抗があるか、単純に不器用か。本人はそれを欠点として抱えてることが多い。
媚びない人は、できるけどやらない。選択としてやってない。この差は本人の中では大きくて、外からはほぼ見分けがつかない。
外側が同じに見えるせいで、後者だと思われた前者が、けっこう傷ついてる。この話は後で書く。
実際に何が違うのか
会話の主導権を、取りにいかない
盛り上げようとしない。沈黙を埋めない。相手が黙ったら、こっちも黙ってる。
場を回すのが上手い人は、実は相手を喜ばせる作業をしてるわけで、それをやらないのが媚びない側の特徴。冷たいんじゃなくて、その労働を引き受けてないだけ。
一緒にいて楽なのは、後者だったりする。ただ、初対面では気まずい。
好意を見せられても、姿勢が変わらない
これが一番はっきりした指標かもしれない。
告白されても、口説かれても、扱いが変わらない。喜びはする。でも、そこから相手を特別扱いしはじめたりしない。
好意を向けられると態度が甘くなる人は、多い。人間として自然でもある。それが起きないタイプは、自分の中の評価軸が外から動かされにくい。
断るのが、速い
行きたくない誘い、興味のない話。これに時間を使わない。
保留にして相手を期待させるとか、やんわり濁して逃げるとか、そういう処理をあまりしない。断られる側は一瞬きついけど、後で考えると、こっちの時間も無駄になってない。
ホスト時代、一番読めなかったのがこのタイプ
褒めても、跳ね返ってこない
営業のやり方って、褒めて、相手が照れて、そこで距離が縮む、という往復で成り立ってた。
このタイプには、それが通じない。褒めると、ありがとう、で終わる。照れない。返しに来ない。次の一手が消える。
新人の頃、そういう客が二回目に来たとき、何を喋ればいいのか分からなくて焦った。手持ちの技が全部空振りするんだよ。じわっと汗が出た記憶がある。
距離が縮んだ日の、落差
半年かかった。技を全部捨てて、普通の会話しかしなくなってから、急に喋ってくれるようになった。
営業の顔を外した瞬間に、向こうも外した。あの落差は、けっこうな衝撃だった。あんなに笑う人だったのか、と。
後から考えると、この人は最初からずっと同じ態度でいただけ。変わったのは俺のほう。媚びを打ち返さないのは拒絶じゃなくて、こっちの営業に反応する回路がなかっただけだった。
店で本人たちが言っていたこと
媚びられないんじゃなくて、やり方を知らない
からん、と氷が鳴るくらいの静かな時間に、こう言われたことがある。
「甘えるのが上手い子見てると、あれどうやってんのって思うよ」
これ、意外だった。選択としてやってないんだと思ってたけど、そうじゃない人が混ざってる。やり方が分からないまま大人になって、今さら習得する場面もなくて、結果として媚びない人として扱われてる。
本人はそれを、強さとして評価されることに複雑な気持ちを持ってた。強く見られるのが、しんどいと。
気を遣ってないと思われるのが、地味にきつい
もうひとつ、刺さったやつ。
「めちゃくちゃ気遣ってるんだけどね。伝わんないんだよなぁ」
媚びない人の気遣いは、見えにくい形で出る。場を盛り上げる代わりに、相手が話しやすい沈黙を作ってたりする。目立たない。
だから、何もしてない人だと思われる。この誤解の蓄積が、じわじわ効いてくるらしい。
恋愛が長引かない仕組み
誘われる回数が、確実に減る
これは事実として書いておく。
初対面で愛想がいい人のほうが、誘われる回数は多い。反応が読みやすいから、男側が動きやすい。媚びない人は、脈があるかどうかの判定材料が少ないぶん、誘う側にリスクが乗る。
母数が減る。これは避けられない。
ただ、減った母数の中に残る相手は、判定材料が少ない状態でも動ける人でね。この時点でそこそこ絞り込みが済んでるとも言える。
好意が伝わる前に、相手が撤退する
一番もったいないのが、これ。
好意を持ってても、態度が変わらない。だから相手は気づかない。二回誘って、反応が同じだったから諦める。
本人としては普通にしてるだけ。相手からは、脈なしに見えてる。この行き違いで消えていった関係、たぶん相当な数あると思う。
態度を変えろという話じゃなくてね。ただ、変わらないことが情報の欠落として届いてる自覚は、あったほうがいい。
それでも、媚びる練習をする必要はない
減らすべきは愛想じゃなく、こっちの情報の出し惜しみ
甘え方を習得しろ、という結論にはしたくない。あれは向き不向きが激しくて、無理にやると全部不自然になる。
代わりに効くのが、情報を出すこと。
好きな食べ物、行きたい場所、苦手なもの。この程度でいい。媚びない人ほど、自分の話を出さない傾向がある。聞かれれば答えるけど、自分から言わない。
相手からすると、取っ掛かりがない状態。誘う口実が作れない。ここを一個渡しておくだけで、動ける人が増える。
態度は変えなくていい。渡す材料だけ増やす。この分け方だと、無理がない。
媚びない人に接するときは
読んでる人の中に、こういう相手に困ってる男もいると思うから、書いておく。
反応が薄いのは、拒否じゃない。判定を急がないほうがいい。三回目までは同じ態度が続く前提でいると、精神が保つ。
それと、褒め方を変えるといい。外見や持ち物より、その人が選んだことを褒める。あの店いいですね、じゃなく、なんでその店にしたのか聞く。選択に触れられると、このタイプは喋る。俺の場合、そこで初めて壁が動いた。
あとは、こっちが媚びないこと。相手の顔色を見て言うことを変える人間を、このタイプは一番早く見抜く。
媚びない人が損してるかというと、たぶん違う。選ばれる回数が減って、選ばれ方の質が変わってる。それだけの話でね。
数が欲しい時期には不利で、一人と長く続けたい時期には有利。人生の段階によって、有利不利が入れ替わるタイプの性質だと思ってる。
半年かけて笑ってくれたあの客のことは、まだ覚えてるよ。

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