したたかな人を何十人も見たが共通してたのは、嘘をつかないこと。これ、意外じゃない? 俺も最初は逆だと思ってた。
したたかは、騙す技術じゃなくて自分を安売りしない技術
計算高い人ほど、実は読まれている
小細工をする人は、だいたいバレる。しかも本人が思ってる三倍くらい早く。
理由は単純で、計算には手数が要るから。連絡の頻度を意図的にずらす、他の男の影をちらつかせる、機嫌の上下を演出する。全部、動作が増える。増えた動作は不自然として浮く。
見てる側は、細かい理屈まで言語化できない。ただ、なんか作ってるな、という感触だけが残る。それで十分なんだよ。評価はそこで下がってる。
本物は、嘘をつかない
対して、本当にしたたかな人は動作が少ない。
やってるのは、自分の条件を最初に置くことだけ。ここから先は付き合えない、この扱いをされたら抜ける。その線を持ってるから、駆け引きをする必要がない。
線があると、迷いが消える。迷いがないと、態度が一貫する。一貫した態度は、相手から見て読みやすくて、なぜか信用される。皮肉なもんでね。
嘘をつかないのは誠実さの話じゃない。嘘をつく必要がない設計になってる、というだけ。
恋愛の場面で、何が違って見えるのか
引き際を、先に決めている
ここが最大の特徴だと思ってる。
始める前に、やめる条件を決めてる。三ヶ月連絡が途切れたら終わり、とか。この約束が破られたら考え直す、とか。
普通は逆でしょ。関係が悪くなってから、どこまで許せるかを考えはじめる。そのときにはもう感情が入ってて、判断が鈍ってる。
先に決めてある人は、その場面で悩まない。すっと引く。周りからは冷たく見える。本人からすると、決めておいたことを実行してるだけ。
好意を出す量が、相手の出方で変わらない
追われたら引く、引かれたら追う。この往復をやらない。
相手の温度に合わせて自分の温度を調整すると、関係の主導権が常に向こう側に置かれる。したたかな人は、それを避ける。好きなら好きと出すし、それを相手が受け取らなくても、出す量を減らさない。
一見、無防備に見える。実際は、自分の温度を他人に決めさせない構えでね。ここが分かりにくいから、押しに弱い人と誤解されることがある。
感情と判断を、別々に動かす
好きだけど、この人とは続けない。この二つが同時に成立する。
多くの人は、好きなら続けるべきという一本線で処理する。したたかな人は、感情を持ったまま、別の判断を下せる。冷酷なんじゃなくて、二本の線が独立して走ってるだけ。
だから泣きながら別れたりする。矛盾してない。泣いてる部分と、決めてる部分が違うところにあるから。
ホスト時代、一番怖かった客のこと
予算と時間を、最初に告げられた
初回の席で、その人はこう言った。月に使うのはここまで、店にいるのはこの時間まで、と。
新人だった俺は、正直ムッとした。営業を先回りして封じられた感じがしたから。
でも三ヶ月経って、認識が変わった。その人は、宣言した通りに動く。増やさない、減らさない。だからこっちも計算できる。無理に押す必要がないぶん、普通の会話をする時間が増えた。
こういう客が一番やりやすい、と先輩が言ってた意味が、半年後にようやく分かった。
三年通って、きれいに卒業していった
三年後、その人は自分から終わりを告げに来た。
理由の説明はほとんどなかった。今までありがとう、で終わり。引き止める隙がない。追加のボトルもなし。
見送った後、カウンターの向こうでぼんやりしてたのを覚えてる。負けた気分だった。同時に、あれが一番かっこいい終わり方だとも思った。
したたかさって、最後に出るんだよね。始め方じゃなくて、終わり方に。
逆に、すぐ崩れた人の話
二人を天秤にかけた結果
同じ店の別の担当と、俺とを比べる形で動いてた客がいた。
こっちに、あの人はこう言ってくれた、と伝えてくる。向こうにも同じことをやってたらしい。競争させたかったんだと思う。
二ヶ月で終わった。俺と先輩が普通に情報を共有したから。店の人間は、思ってるより裏で喋ってます。
その人は悪い人じゃなかった。ただ、手数が多すぎた。管理しきれなくなって、話の辻褄が合わなくなって、最後は自分から来なくなった。
ざらっとした後味だけが残った夜だった。
演技には、必ず飽きが来る
作った自分でいるのは、疲れる。
本命の前でだけ甘い声を出す、興味のないゴルフの話に付き合う。短期なら持つ。一年は無理。
続かないから、どこかで素が出る。落差が出たとき、相手は今までの全部を疑いはじめる。演技は、続けてる期間より、剥がれた瞬間の被害のほうがでかい。
本物のしたたかさが嘘をつかないのは、たぶん、この計算をしてるから。長期で見たときのコストが合わないんですよ。
店で女性たちが漏らしていた言葉
褒め言葉として使われていない、という話
からん、と氷を回しながら言われたことがある。
「したたかって言われると、なんか腹立つんだよね」
これ、複数から聞いた。言う側は強さの評価のつもりでも、受け取る側には、可愛げがないという意味に届いてるらしい。
自分を守っただけなのに、狡いと言われる。その理不尽さに、けっこう疲れてる人がいた。
素直になれないほうが、よっぽど計算
一番刺さったのが、これ。
「好きって言えないのを純情だと思ってる人、あれのほうが計算してるでしょ」
言われて、ことん、と何かが落ちた。傷つかないように好意を隠すのも、立派な保身なんだよね。
したたかさを非難する側が、実は同じことをしてる。出し方が違うだけで。この視点は、当時の俺にはなかった。
したたかさが足りないと感じている人へ
増やすのは駆け引きじゃなく、撤退ライン
もっとしたたかになりたい、と思ってる人が身につけるべきは、駆け引きの技術じゃない。
やめる条件を、紙に書けるくらい具体的に決めておく。それだけ。
連絡が二週間なかったら終わり。この扱いが三回続いたら考える。数字にしておくと、感情が高ぶった場面でも判断できる。
決めておかないと、その場の気分で許してしまう。許すたびに基準が下がって、気づいたら値札がなくなってる。
尽くすのをやめる必要はない
したたかになるために冷たくなれ、という話じゃないよ。
尽くすのは続けていい。ただし、返ってこなくても平気な範囲で。ここを超えると、見返りを請求したくなる。請求が発生した時点で、関係は取引になる。
自分が無理してないかどうか。判定はそこ一個でいい。

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