好きな人が、他の誰かと楽しそうに笑ってる。それを見た瞬間、胸の奥が、ぎゅうっと締めつけられる。 LINEの返信が少し遅いだけで、頭の中がぐるぐる回り出す。 で、そんな自分に、うんざりする。なんでこんなに心が狭いんだろう、って。 …わかるよ。その苦しさ、俺も、いやってほど知ってる。
たぶん、本当に欲しいのは、何も感じない無敵の心じゃなく好きな人を、ちゃんと好きなまま。でも、この胸をかき乱す苦しさだけは、手放したい。相手を、信じたい。 そういうこと、でしょ。 その願いは、ちゃんと叶う。順番に、話していくね。
「なくしたい」と願うほど、独占欲は大きくなる
まず、ちょっと残酷な事実から。 独占欲を、意志の力でねじ伏せて消そうとするのは、たぶん、逆効果になる。
感情に「消えろ」は、効かない
モヤモヤするな、嫉妬するな、って自分に言い聞かせる。やったこと、あるでしょ。 で、どうなった? よけいに、そのことばっかり考えちゃう。 感情って、押さえつけるほど、跳ね返してくるんだ。フタをした鍋が、ぐつぐつ音を立てるみたいにね。 なくそう、消そう、と力むほど、独占欲は、存在感を増していく。皮肉な話。
たとえるなら、”シロクマのことだけは考えるな”って言われた時の、あれ。言われた瞬間、頭の中が、シロクマでいっぱいになるでしょ。 独占欲も、まったく同じ原理。禁止するほど、際立ってくる。だから、戦う相手を、間違えないこと。
目指すのは、ゼロじゃなくて、飼いならすこと
だから、発想を、まるっと変えよう。 消す、じゃなくて、小さくして、うまく付き合う。 独占欲を、心の中で飼ってる番犬だと思ってみてほしい。 忠実なんだけど、ちょっと過敏で、郵便屋さんにまで吠えちゃう、そういう犬。 その犬を、処分する必要はないんだよ。しつけて、無駄吠えを、少しずつ減らしていく。ゴールは、そっち。
そもそも、独占欲ゼロが正解でもない
勘違いしてほしくないのが、独占欲は、まるっきりの悪じゃないってこと。 大切な人を、誰かに取られたくない。この気持ちが、完全にゼロだったら、それはそれで、たぶん愛が薄い。 問題なのは、量と、コントロール。ちょっとヤキモチ、くらいなら、むしろ関係の、いいスパイスになる。 それが、相手を縛る、監視する、追い詰める、まで暴走した時。そこで初めて、毒に変わるんだ。 だから目指すのは、無感情になることじゃない。ほどよく吠えて、でも、噛みつかない。その一線なんだよ。
そもそも独占欲は、愛じゃなくて怖さの顔をしている
ここが、いちばん大事なとこ。 独占欲って、一見、深く愛してる証拠みたいに見える。でも、その正体をひっくり返すと、たいてい、別のものが出てくるんだ。
番犬は、君が怯えてるから吠える
犬ってさ、飼い主が不安だと、それを敏感に感じ取って、よけいに吠えるんだよ。 独占欲も、まったく同じ。 君の中に、怖さがある。それを守ろうとして、吠える。 何が怖いのか。失うこと。置いていかれること。ひとりに戻ること。 つまり独占欲の正体は、愛そのものというより、失う恐怖のほう。愛の皮をかぶった、不安なんだ。
おもしろいのが、この不安、最初に”体”にくること。 胸が、ざわっとする。みぞおちが、重くなる。頭で考えるより先に、体が反応してる。 だから、頭で止めようとしても、たいてい間に合わない。まず体の反応なんだ、って知っておくだけで、あとの対処が、だいぶ変わってくるよ。
「取られたら終わり」の裏に、自分への疑いがある
もう一歩だけ、深く潜ってみる。 なんで、失うのがそんなに怖いのか。 その奥には、たいてい、こいつが隠れてる。 自分なんて、選ばれ続けるほどの価値がない、っていう、静かな疑い。 だから、相手をつなぎ止めようと、必死になる。監視する。束縛する。 独占欲がきつい人ほど、じつは、自分に自信がない。矛盾してるようで、これがカラクリなんだよね。
その自信のなさが、どこから来てるのか。人によって、違う。 昔、誰かに手ひどく裏切られた記憶かもしれない。子どもの頃、安心して甘えられなかった経験かもしれない。 過去のどこかで負った、小さな傷。それが、今の相手には何の関係もないのに、今の相手に、投影されてる。 これ、けっこう大事な視点でね。目の前の人を疑ってるようで、本当は、過去の亡霊と戦ってる。そういうことが、ある。 そこに気づくだけでも、ふっと、肩の力が抜けたりするんだ。
ホストクラブで見た、独占欲に飲まれた人たち
夜の仕事をしてた頃、独占欲の”標本”を、それこそ毎晩、目の前で見てきた。
手に入らない相手ほど、独占したくなる矛盾
ホストと客。この関係、そもそも、手に入らないものなんだよ。みんな分かった上で、遊びに来てる。 なのに、深くハマった子ほど、独占したがるんだ。 「昨日、あの子の席、何時までいたの」「私以外にも、こういうLINE送ってるんでしょ」 手に入らないものほど、握りしめたくなる。人の心の、不思議なとこ。 この時、思ったんだ。独占欲って、相手そのものじゃなくて、その人の中の不安に、貼りついてるんだって。
「頭ではわかってるのに、モヤモヤが止まらないの」
ある子が、泣きそうな顔で言った言葉が、忘れられない。 「あなたが仕事で他の子に優しくするの、当たり前だって、頭ではわかってる。でも、わかってても、心がついてこないの。苦しい」 これ、独占欲の本質を、まるごと言い当ててる。 頭は、理解してる。でも、感情は、別の生き物なんだ。理屈で説得できるなら、誰も、こんなに苦労しない。 だから、自分を責めないでほしい。理屈で勝てないのは、君が弱いからじゃない。感情って、そもそもそういう仕組みだから。
その子には、こう返したのを覚えてる。 「その苦しさは、あなたが本気だから出てくるんだよ。でも、その苦しさで自分をボコボコに殴るのは、もう、やめよう」 独占欲に飲まれてる人に必要なのは、責める言葉じゃないんだ。まず、その感情を、否定せずに受け止めてくれる誰か。 自分に対しても、同じ。まず、自分を責めるのを、やめる。話は、そこからだから。
正直に言う、俺も独占欲の塊だった
偉そうに書いてるけどさ。昔の俺、けっこう、ひどかったんだよ。
相手の一挙一動を、監視してた頃
付き合ってた子がいてね。夜の仕事してるくせに、彼女には、異常に嫉妬した。 誰と飲みに行った。既読なのに返さない。プロフ写真を変えた。 そのいちいちで、心がざわついた。問い詰めたことも、正直、何度もある。 自分は客に囲まれてるくせに、彼女は自分だけを見てろ、って。今思えば、身勝手にもほどがある。 あの頃の俺、たぶん、いちばん一緒にいたくないタイプの男だった。(苦笑)
何が、俺を変えたか
転機は、彼女に言われた、たった一言だった。 「あなたが私を疑うたびに、私、ちょっとずつ、あなたを嫌いになってくよ」 ガツンときた。冷たい水を、頭から浴びせられたみたいに。 俺が握りしめようとするほど、彼女の心が、指の間から逃げていってた。守ってるつもりで、自分の手で、壊してたんだ。 その日から、変わろうと決めた。すぐには、無理だった。でも、少しずつ。 いちばん効いたのは、皮肉なことに、彼女に集中するのを、やめることだった。
最初にやったのは、彼女を疑いそうになったら、その気持ちを、ノートに書きなぐること。 声に出さず、彼女にぶつけず、ただ、紙に吐き出す。書いてるうちにね、あれ、これ、彼女の問題じゃなくて、俺の焦りの問題だな、って、じわじわ見えてくるんだ。 ぶつける前に、書く。この一手間が、けっこうデカかった。
独占欲を、静かに小さくしていくやり方
じゃあ、具体的に、どうやって番犬をしつけるか。時間をかけて掴んだやり方を、置いていくね。
感じるのはOK、”動く”のだけを止める
まず、これ。感情と、行動を、切り離す。 嫉妬しても、いい。モヤモヤしても、いい。そこは、止められないから。 でも、その感情のまま、スマホをのぞく、問い詰める、責める。この”行動”だけは、ぐっと踏みとどまる。 ざわっときたら、六秒、待つ。ゆっくり、息を吐く。この一拍が、番犬の首輪になるんだ。 感じることは、罪じゃない。動くことが、関係を壊す。ここを、はっきり分ける。
頭の中の”物語”を、事実と切り分ける
嫉妬してる時の頭って、勝手に、最悪の物語を作り出すんだよ。 返信がない、イコール、他の誰かといる。楽しそう、イコール、俺に飽きた。 でもそれ、”事実”じゃなくて、不安が書いた”脚本”なんだ。 だから、ざわっときたら、一回、自分に問う。これは、確かめた事実? それとも、今、俺が勝手に作った話? たいてい、後者。事実と、妄想。この二つを、紙の上で分けるだけでも、番犬は、少し静かになる。
疑いたくなったら、あえて”逆”をやる
これは、ちょっと荒療治。 相手を問い詰めたくなった、まさにその瞬間に、あえて、信頼を示す行動を、ひとつだけする。 「今日、楽しんできてね」って、笑って送り出す。連絡を、あえて、追わない。 最初は、心臓がバクバクするよ。手が、震えるくらい。 でも、これを繰り返すと、脳が学習していくんだ。あ、疑わなくても、世界は、崩れなかった、って。 不安に、行動で”反証”を突きつける。地味だけど、これがいちばん、番犬をおとなしくさせていく。
自分の世界を、相手”以外”にも広げる
これが、根っこの治療。 独占欲がきつい人って、たいてい、世界の中心に、その人ひとりしかいないんだ。 恋人が、人生の全部。だから、失うことが、世界の終わりに感じる。だから、しがみつく。 そこで、意識して、他の柱を増やしていく。趣味でも、友達でも、仕事でも、なんでもいい。 自分の機嫌を、自分で取れる場所を、いくつも持つ。 相手が、人生の”全部”から、”大切なひとつ”に変わった時。握る力は、自然と、ゆるんでいく。
それにね、他の柱を育てると、副産物がついてくるんだ。 自分に、自信が戻ってくる。仕事で認められた。友達に頼られた。好きなことが、上達した。その小さな実感が、あの”自分には価値がない”っていう疑いを、じわじわ溶かしていく。 自信のある人って、そもそも、あまり束縛しないんだよ。失う怖さが、薄いから。 遠回りに見えて、自分を満たすことが、独占欲への、いちばんの特効薬だったりする。
握るほど逃げる、を、思い出す
これは、お守りみたいな言葉。 人の心は、強く握るほど、するりと逃げていく。ゆるく開いた手のひらにだけ、残ってくれる。 そもそも、人って、所有できないんだ。 君にできるのは、この人といたいな、って思ってもらえる自分でいること。ほんとに、それだけ。 ちょっと、逆の立場を想像してみて。 四六時中、疑われて、行動をいちいち報告させられて。愛されてる、というより、囲われてる気分に、なるでしょ。 君の独占が強くなるほど、相手は、静かに息苦しくなっていく。愛情のつもりが、相手には、重りになってるんだ。 それに気づけたら、ぎゅっと握ったその手を、ちょっとだけ、ゆるめられる。 支配は、人を遠ざける。安心は、人を引き寄せる。いつだって、逆なんだよ。

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