寝る前にスマホの写真を遡って、彼女の顔で指が止まる。可愛いな、と思った次の瞬間には、なんでこの子は俺といるんだろう、が来る。この落差がきついんだよね。惚気けたいのに、なぜか胃のあたりがずしっと重くなる。
可愛い年下彼女への心配は、彼女への不信じゃない
付き合いはじめの三ヶ月はテンション爆上がりだったはず。それが半年経つと、居酒屋で隣の席の男が彼女をちらっと見ただけで、心臓がざわっとする。馬鹿らしいって自分でわかってるのに、目が勝手にその男を追ってる。
今の、見たよな。絶対見たよな
多くの人はここで、自分は彼女を疑ってると勘違いするわけ。でも違うんだよなぁ。疑ってるのは彼女じゃなくて自分のほう。
心配の正体は、自分の足元がぐらついている音
彼女が浮気しそうかどうかなんて、本当は考えてない。考えてるのは、自分が今後も選ばれ続けられるかどうかだけ。
年下って、こっちが止まってても向こうは進む。就職して、環境が変わって、付き合う人間が増えて、去年より確実に綺麗になっていく。その速度に自分がついていけてない自覚があるとき、心配という名前で不安が顔を出す。
だから「彼女が可愛いから心配」を分解すると、可愛いは関係ない。自分の足場がぐらついてる音を、彼女のせいにしてるだけ。
褒めた瞬間、彼女に値札をつけてしまっている
可愛い、と口に出すこと自体は悪くない。ただ、頭の中で無意識に評価してるんだよ。この子はこれくらいの価値がある、と。
値札をつけると、それより高く買う奴が現れるんじゃないかと怖くなる。当たり前でしょ。自分で市場に出しといて、盗られたらどうしようって騒いでるんだから。
彼女は商品じゃないし、誰かと競り合ってるわけでもない。この単純な事実を忘れた男から順に、面倒くさい彼氏になっていく。
店で聞いた、束縛されていた女の子の本音
ホストクラブで働いてた頃、年上彼氏がいる子の話は毎晩のように聞いた。だいたい愚痴だけど、たまに核心を突く言葉が出てくる。
束縛が嬉しかったのは、最初の三ヶ月まで
当時二十四歳くらいの子が、氷をカラカラ回しながら言ってたのを覚えてる。
「束縛って最初は愛されてる証拠だと思うじゃん。でもだんだん、私って信用されてないんだなって証拠に見えてくるんだよね」
これ、聞いた瞬間ぐさっときたわ。俺も同じことやってたから。
心配して連絡を増やすと、最初の数ヶ月は好意として受け取られる。ところが同じ行動が、時間が経つと監視に変わる。行動は一ミリも変わってないのに、意味だけが裏返る。この反転に気づけない男が、圧倒的に多い。
女が離れるときは、揉めない
別の子はこう言ってた。
「浮気しようと思ったことないよ。ただ、家に帰りたくない日が増えただけ」
これが一番怖い。喧嘩もしないし、責めもしない。彼女の中で静かに順位が入れ替わって、ある日ぱたっと連絡が減る。そこで慌てて問い詰めると、もう手遅れ。
心配で締め付ければ締め付けるほど、彼女は正直な報告をやめる。怒られないための報告になる。そうやって二人の間から本音が抜けていく。
俺が二十代の終わりにやらかした監視の話
偉そうに書いてるけど、俺は完全にやらかした側。
二十八のとき、六つ下の子と付き合ってた。仕事柄、毎晩他の女性と飲んで喋ってるくせに、彼女が大学の男友達と飲みに行くのだけは許せなかった。今考えるとどの口が言ってんだって話。
既読がつく速度で、その日の機嫌が決まっていた
送ったLINEに五分で既読がつけばホッとする。三時間つかないとイラっとする。夜中に返ってくると、今まで何してたのか計算しはじめる。
(バイト終わったの二十三時って言ってたよな。今、一時なんだけど)
しかも直接は聞けない。聞いたら重い男だとバレるから、遠回しに探る。今日楽しかった、誰といたの、へえ、その人とはよく行くの。取り調べだよね、完全に。
位置情報の共有を提案したこともある。断られて、なぜか自分が傷ついてた。あの頃の俺、頭の中がぐるぐるしてて、彼女のことなんか一ミリも見てなかった。
別れ際の一言で、全部バレてたと知った
結局その子とは終わった。最後の日、彼女が言ったのはこれ。
「心配してるのって私のことじゃなくて、自分が捨てられることでしょ」
返す言葉なかったわ。図星すぎてヒヤッとした。しかも彼女は責める口調ですらなくて、ずっと前から気づいてたけど言わなかった、みたいな静かな顔をしてた。あれ、正直ちょっと泣きそうになった。
見透かされてたんだよ。俺の心配は、彼女への愛情の顔をした自己防衛だった。
心配を口に出すか、飲み込むかの分かれ目
じゃあ全部黙って我慢しろって話かというと、それも違う。溜め込んだ男は、ある日まとめて爆発するから余計に厄介。
主語を彼女にしないだけで、重さが半分になる
誰と行くの。何時に帰るの。これは彼女の行動を管理する言い方。
俺、こういうとき勝手に不安になるからさ、帰ったら一言だけちょうだい。これは自分の弱さの申告。
同じ不安から出てるのに、受け取る側の負担がまるで違う。前者は監視される側にされ、後者は頼られる側になる。人は、管理されるより頼られるほうを選ぶ。
弱さを見せるのが怖いって気持ちもわかる。年上だし、余裕ある男でいたいし。でも隠した弱さは態度に滲むから、結局バレてる。
言う頻度は、月に一回くらいでちょうどいい
これを毎週やると、ただの空気になる。三回目には彼女の中で「またその話」に変わる。
言葉って残高があって、使うほど減る。年に数回だけ真顔で言う男の一言は効くけど、毎日言ってる男の一言は聞き流される。心配を伝えるのは、そこぞという時のためにとっておく。
年の差は、時間じゃなく更新をやめた瞬間に開く
五歳差でも十歳差でも、話が合ってる二人はいる。逆に三つしか違わないのに会話が続かないカップルもいる。
話が合わなくなるのは、年齢のせいじゃない
彼女が好きな音楽、行きたがってる店、最近ハマってる配信。こういうものを、めんどくさいと切り捨てた回数だけ距離が開く。
若い子に合わせて無理に若作りしろって意味じゃない。ただ、彼女の世界に興味を持ち続けるかどうかは、年齢と一切関係ない。四十でも新しいものを面白がる男はいるし、二十五で更新をやめた男もいる。
はぁ…と溜息が出るのは、だいたい自分が止まってるとき。
彼女の世界を狭めない男が、最後に残る
友達と遊ぶな、その服はやめろ、その仕事は心配だ。全部、彼女の世界を小さくする言葉。
世界が狭くなった彼女は、一時的にこっちだけを見るようになる。それで安心するんだけど、狭い世界に閉じ込められた人間は、いつか必ず外に出たくなる。そのとき出会った誰かが、広い世界を見せてくれる側になる。
逆に、彼女の世界が広がるのを面白がれる男は、その世界の中心に居座り続ける。どこに行っても、帰ってくる場所として選ばれるんだ。

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