気持ちが落ちた時、俺のキスの何が変わったか
気持ちが落ちていた時期の自分のことを、けっこう鮮明に覚えてる。 回数は減ってなかったんだよ。朝、家を出る前には必ずしてたし、寝る前もしてた。 変わったのは、それ以外が全部消えたこと。用がない時のキスが、一回もなくなってた。 自分では気づいてなかった。彼女のほうが先に気づいてた。
儀式は、気持ちが落ちても残る
なんで回数が減らなかったかというと、習慣だったから。 歯を磨くのと同じ位置に入ってたの。だから気持ちが動かなくなっても、体が勝手にやる。 残酷なんだけど、そういうもんだと思う。習慣化されたものは、中身が空になっても形だけ続く。
先に消えるのは、用のないほう
逆に、何の前でもないキスは、気持ちがないと発生しない。きっかけがないから。 テレビを見てる途中で、ふっとする。台所ですれ違いざまにする。理由はない。 あれは気持ちが余ってる時にしか出てこないの。余りが尽きると、真っ先に消える。 キスの仕方で愛され度を測るなら、部位を数えるより、この一点を見たほうが早い。
部位に固定の意味はない
額は尊敬、頬は親愛、という一覧の限界
この手の記事、どこにでもあるでしょ。額なら守りたい、頬なら親愛、唇なら情熱、手の甲なら敬愛。 読み物としては面白い。ただ、根拠として使うにはかなり弱い。 なぜかというと、同じ部位が、カップルによって別の意味を持ってるから。
同じ場所が、相手によって別の意味になる
額にキスをするのが癖の人がいる。その人にとって、額は一番よく使う場所であって、特別な意味は乗ってない。 一方で、普段は唇だけの人が、ある日だけ額にした。この場合は明らかに何かが起きてる。 つまり意味を作ってるのは部位じゃなくて、その人の普段との差。何度も書いてきたことだけど、ここでも同じ。基準線を知らないと、一発では読めない。
それでも一覧が読まれる理由
分かりやすいからだよね。当てはめるだけで答えが出る気がする。 ただ、当てはめて出た答えは、たいてい自分がもともと思っていたことの確認になる。不安な人は不安な結論を引くし、安心したい人は安心する項目を選ぶ。 それなら、最初から不安の中身を見たほうが早い。
見るなら、タイミングのほう
目的のあるキスと、ないキス
キスを二つに分けてみる。 目的があるもの。出かける前、帰ってきた時、寝る前、何かの行為の前。前後に決まった場面がある。 目的がないもの。文脈がなく、ただ通りすがりに起きるやつ。 気持ちが落ちた時に残るのは目的があるほうで、消えるのは目的がないほう。俺の実例がそれ。
全部が目的ありに寄ったら
だから、チェックするなら比率。 ここ一ヶ月のキスを思い出して、決まった場面のものしかないなら、そこは少し動いてる。 逆に、意味のないタイミングでのキスが今も混ざってるなら、回数が減っていても、そこまで気にしなくていいと思う。
儀式になっているかどうか
「彼、行ってきますのキスはするの。でもそれ以外はしないんだよね。あれ、儀式なんだよ」 店でこれを言われた時、胸がざわっとした。自分のことを言われてる気がして。 儀式は、やらないと落ち着かないからやる。相手のためというより、自分の手順のため。 やってもらえてはいるのに寂しい、という感覚には、ちゃんと理由があるの。
キスの後の、数秒
部位でも長さでもなく、終わった直後を見ると分かることがある。
目を合わせるか、すぐ離れるか
キスの後、視線がどこに行くか。 こちらの目を見る人は、反応を見てる。というより、繋がりを確認してる。 すぐ別の方向を向く、スマホを見る、次の行動に移る。この動きが続いてるなら、それは作業として処理されてる。 「キスの後に目を見てくれなくなった時、あ、って思った」 そう話してくれた人がいた。回数も長さも変わってなかったらしい。変わったのは視線だけ。
笑うか、真顔か
これも効く。 「前は笑いながらしてたのに、今は真面目な顔でするようになった」 笑いが混ざるのは、余裕がある証拠。 真顔になるのは、二つある。すごく真剣な時と、義務になってる時。区別は、その後の会話があるかどうかで割れる。
続きの会話があるか
キスの後に、何か一言出るか。何でもいいの。今日の服いいね、でも、髪切った?でも。 そこで会話が生まれるなら、キスは会話の一部として機能してる。 何も出ずに終わるなら、それは独立した動作になってる。動作は、いつか省略される。
長さと強さは、あてにならない
情熱の量として読むと、外す
長いキスは愛が深い、という読み方は危ない。 長さはその日の気分や、場所や、時間の余裕でいくらでも変わる。忙しい朝の三秒と、休日の十秒を比べても何も出てこない。 比べるなら、同じ状況同士。平日の朝と平日の朝。それでようやく差が意味を持つ。
長いのに雑、という状態
回数も長さも十分なのに、なぜか満たされない。この相談はよく聞いた。 そういう時はだいたい、視線か、会話か、どちらかが抜けてる。 量が足りてるのに寂しいなら、量の話じゃないんだよ。そこを金額の話みたいに増やそうとすると、余計にずれる。
店で聞いた本音
別れ際の一回で、今日が分かる
「別れ際のキスの長さでさ、今日楽しかったかどうか分かるんだよね」 これを言った人は、既婚者で、夫との話をしてた。 一日の終わりの一回は、その日の総括みたいなものらしい。長さというより、名残があるかどうか。 確かにそうかもな、と思った。用がない時間帯だから、感情が乗りやすい。
してくれないのが一番きつい、とは限らない
意外だったのは、これ。 「されないよりも、されてるのに何も感じないほうが怖いの」 形が残ってるぶん、問題として扱えない。相手はやることをやってるから、文句のつけようがない。 不満を言葉にできない状態が、一番長く続く。
減ったこと自体は、異常じゃない
回数は落ちるのが普通
念のため書いておくけど、年数が経てば回数は落ちる。それは関係の劣化じゃなくて、生活の変化。 毎日していたものが週に数回になるのは、ごく普通のこと。そこで焦ると、相手を追い詰めることになる。 落ちた回数を戻そうとして、キスを要求するのは、たぶん逆効果になる。義務が一個増えるだけだから。
見るのは、減り方じゃなく偏り方
判定に使うなら、総量じゃなくて内訳。 週に二回でも、両方とも用のないタイミングなら、気持ちは動いてる。 毎日していても、全部が出かける前と寝る前だけなら、そこは儀式に寄ってる。 同じ回数でも中身が違う。数えるなら、種類のほうを数えたほうがいい。
気になった時に、できること
キスの話を、キスでしない
最近してくれないよね、と言うのは、たいてい裏目に出る。 言われた側は、指摘された行為を義務として増やす。増えたぶん、さらに空っぽになる。 話すなら、キスの話としてじゃなく、最近ちょっと寂しい、くらいの温度で出すほうが届く。行動を要求すると、行動だけが返ってくるから。
用のない一回を、自分から出してみる
もうひとつ、効くやつ。 測るのをやめて、自分から一回、何でもないタイミングでしてみる。 その時の相手の反応を見る。驚いて笑うか、固まるか、嬉しそうにするか。 測定に使うというより、止まっていた流れを一回動かす行為として。動かしてみると、思っていたより何も起きていなかった、と分かることもある。

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