恋愛で心配されたい心理とは?重くならない甘え方

夜中の2時すぎ、店の片付けをしている途中でスマホが震えた。常連のお客さんから、熱が38度あるかも、とだけ。

絵文字もスタンプもない、たった一行。正直言って、その素っ気なさのほうが引っかかったんだよね。

翌週に来店した彼女は、グラスのふちを指でなぞりながら笑ってた。

「誰かに心配されたくて送っただけ。ダサいでしょ」

目次

心配されたいのは、自分がここにいると確かめたいから

ホストクラブで女性たちがこぼしていた本音

店でいちばんよく耳にした弱音は、恋愛の愚痴とは別物だった。

看護師をしているお客さんがいてさ。一日中、患者さんの顔色ばかり追いかけている人で、ある晩こんなことを言った。

「みんなの大丈夫は毎日聞いてるのに、私の大丈夫は誰も聞いてくれない」

溶けかけた氷を見つめたまま、笑いもせずに。

別の夜には、アパレルで働く子が少し照れながら打ち明けてくれた。風邪で寝込んだとき、元カレより友達より早く体調どう?と送ってきたのが担当の僕で、それが悔しいくらい嬉しかったって。

いや、笑うしかないわ!こっちは半分、営業のつもりで送ってたんだから。

シャンパンでも顔でもなく、自分のことを気にかけてくれる人がいる。店に通う理由がその一点だけ、という女性は少なくなかった。恋人との間で満たされない分を、夜の街で埋めにくる。そういう流れを何度も見てきたし、しかも僕は、その流れに乗っかって稼いでいた側でもある。

心配は、外からドアをノックされるようなもの

38歳の大地さんの話が、ほとんど答えみたいなものだった。

仕事に追われて連絡が途切れがちだった頃、彼女から最近どうしたの、心配してるよとメッセージが届いた。最初は、自分のことで手一杯なのにと少し重たく受け取ったそうで。でも時間が経つうちに、誰かが気にかけてくれているという事実のほうが勝ったんだとか。

23歳の蒼くんは、飲んで帰りが遅くなった夜に無事着いた?心配したよと連絡が来て、自分はちゃんと誰かの頭の中にいるんだと実感したと話してた。

面白いのは、二人とも逆のパターンにも敏感なこと。連絡しなくても何も言ってこない相手だと、どうでもいいと思われてるのかと不安になるらしい。

心配って、部屋にこもってる自分に向けて、外から軽くドアを叩かれる感覚に近いんじゃないかな。

コンコン、生きてる?

返事をするかしないかより、叩かれたという事実で、人は自分がまだここにいると思えるんだよ。

元ホストの僕が、心配を営業に使っていた頃の話

同じ文面を二人に送って、凍りついた冬の夜

ホスト時代、営業LINEの書き出しはほぼ固定してた。

寒くなったけど体調崩してない?

雨すごいけど濡れてない?

これを送ると返信率がはっきり上がる。数字が出るんだから、そりゃ使うっしょ。

事件はある冬に起きた。同じ文面を二人のお客さんに送ったら、その二人がまさかの友達同士!しかも、一緒にご飯を食べてる最中に、二人のスマホが同時に鳴ったんだって…。

翌日、片方から届いたのはスクショが二枚だけ。ほぼ同じ文章が並んだ画像。

背中がヒヤッとして、言い訳を三つひねり出して、三つとも消した。

(いや、これはもう無理だろ)

結局、テンプレでした、ごめんなさいと素直に謝るしかなくて。

その子は二度と店に来なかった。もう一人はなぜか通い続けてくれて、それだけで救われた気分だったよ。ある日の帰り際、その子にこう言われた。

「あの文面より、謝ってきた文章のほうがよっぽどあなたっぽかった」

褒められてるのか刺されてるのか、いまだに分からない(笑)あの時の背中の冷たさは、今でもたまに夢に出てくる。

手癖の心配と本物の心配は、細かいところでバレる

あの冬に思い知ったのは、心配の言葉そのものにはたいした力がないってこと。人の心を動かすのは、その人にしか向けられない細部のほう。

26歳の会社員、楓さんの彼氏は、仕事で大きなミスをして沈んでいた彼女に何かあった?と聞いて、夜遅くまで話に付き合った。

32歳の海斗さんの彼女は、熱が出たと連絡を受けると薬ある?と返し、そのまま近くのコンビニで買って届けに来てくれた。

言葉だけなら誰でも言えるレベル。差がつくのは、その後に体が動いてるかどうかでしょ。

営業の心配は、送信ボタンを押した瞬間に終わる。本物には、送ったあとに続きがある。

この前言ってた頭痛、まだ残ってる?とか、例の会議は乗り切れた?とか。相手の話を覚えてないと、絶対に出てこない一言だよね。受け取る側って、そこを怖いくらい正確に嗅ぎ分けてるから。

心配されたいのに大丈夫と答えてしまう人へ

迷惑をかけたくない気持ちが、SOSを塗りつぶす

27歳の隼人くんは、彼女に何かあった?と聞くたび、別にと返されることが多いと言ってた。本当は心配してほしいんだろうな。そう分かっていても、しつこくして嫌がられるのが怖くて一歩引いてしまう。

しかも本人まで、弱ってるときは大丈夫と答えちゃう側だというから、話がややこしい。お互いに大丈夫を投げ合って、誰も本音を受け止めないキャッチボール。なんか切なすぎ。

29歳の美月さんは一人暮らし。夜中に突然具合が悪くなっても、家族に心配をかけたくなくて誰にも連絡しなかった。翌朝その話を友達にしたら、なんで言ってくれなかったのと本気で怒られたそう。

42歳の悠斗さんはもっと根が深い。若い頃に刷り込まれた男は弱音を吐くな、が今も体のどこかに残ってる。大丈夫か?と声をかけてほしい瞬間は年々増えているのに、言葉にする前に一人で片付けてしまう、と苦笑いしてた。

まぁ、僕も人のこと言えないんだけどさ。

ホストを辞めた年の冬、インフルエンザで三日間寝込んだ。店では毎晩のように誰かの体調を気にしていたくせに、自分の熱は誰にも言えなかった。天井のシミを数えながら、心配される練習を一度もしてこなかったんだなと気づいて、ちょっと泣きそうになったよ。

ちょっとしんどい、のひと言で空気は変わる

楓さんの話には続きがある。

彼女はもともと、何があっても大丈夫と笑って流すタイプだった。あのミスの日だけ、試しにちょっとしんどいと送ってみた。たったそれだけ。

すぐに返ってきた反応を見て、この人は本当に自分を見てくれてると腹の底から思えたそうだ。前に付き合っていた人は真逆で、似たような場面で自分で何とかしてと返してきた。そこから気持ちが少しずつ冷めていった。

24歳の桜子さんの伝え方にも、うまいなぁと唸った。

生理痛がひどい日に、今日は無理かも、とだけ送る。理由を並べないし、助けてとも書かない。彼氏は欲しいものある?と聞いて、帰りに温かい飲み物を買ってきてくれた。あれこれ詮索されず、ただ近くにいてくれたのがありがたかったみたい。

二人に共通してるのは、相手が受け取りやすい温度で言葉を投げてること。

しんどい、無理かも、ちょっと弱ってる。これくらいの軽さなら、受け取った側も次に何をすればいいか想像しやすいじゃん。いきなり重たい長文が届くと、人って読みながら身構えちゃうもんでさ。

店でもそうだった。深夜3時の長文LINEに返す言葉が見つからなくて、既読のまま朝を迎えたことが何度かある。

心配されすぎると、なぜか息が詰まる

量よりも、形がズレたときに疲れが来る

桜子さんには、前の彼氏とのちょっと苦い記憶もある。具合が悪いと伝えると、大丈夫?大丈夫?と何度も聞かれて、そのたびに大丈夫だよと返す気力を削られた。

心配されてるのに、なぜか消耗する。おかしな話だけど、経験ある人は多いはず。

31歳の莉奈さんは、ちょうど反対側にいた人だ。彼氏が寝込むと、つい何回も連絡を入れてしまう。ある日、少し放っておいてほしいと言われて、胸の奥がズキッとしたって。

自分がされたら嬉しいことを、そのまま相手にしていただけなのにね。

そこで彼女は、心配の形は人それぞれ違うんだと知って、距離の取り方を一から考え直した。

そばにいてほしい人がいる。ドアノブに差し入れを掛けて、黙って帰ってほしい人もいる。メッセージ一通で満足する人もいれば、熱が下がるまで完全に放置されたい人だっている。

愛情の量が足りないんじゃなくて、渡し方の規格が合ってないだけ。海外のホテルで、電気は通ってるのにコンセントの形が違って充電できない。あの、やり場のない感じ。

何も言ってこない相手を、すぐに冷たい人だと決めない

35歳の花音さんは、前の恋人と別れた理由を、心配されなかったことの積み重ねだと話してくれた。

今日しんどかったと言っても、お疲れ様で会話が終わる。そんな夜が何十回も続いたという。今の相手は、少しでも様子が違うとどうした?と聞いてくれる。だから安心していられる、と。

この感覚、痛いほど分かる。

ただ、ひとつだけ店で学んだことがある。気づかない人と気にしていない人は、外から見るとほぼ同じ顔をしてる。厄介なことに。鈍いだけで、言われたら全力で走ってくる人って、男女問わず結構いるからさ。

ホスト時代、わざとLINEを未読のまま放置して、担当がどう動くか試すお客さんもいた。あれで関係が深まったケースを、僕はほとんど知らない。試されてると気づいた瞬間、人は心配より先に疲れが来ちゃうものなんだよなぁ。

責める前に、一回だけ言葉で伝えてみる。それでも何ひとつ変わらなかったら、そのときは花音さんのように離れる理由になる。迷わなくていい。

心配されたい気持ちと、うまく付き合っていくには

試す代わりに、自分の取扱説明書を渡しておく

手っ取り早いのは、元気な日のうちに話しておくこと。

熱が出たら一人にされると泣くタイプでさ、とか。しんどいときは励ましより、隣で黙ってテレビ見ててくれるほうが助かる、とか。こういうことを、何でもない夕飯の途中くらいに何気なく言っておく。

弱ってる最中に伝えようとすると、どうしても責める口調になっちゃうから。

海斗さんは、甘えすぎたら重いと思われそうで、どこまで頼っていいのか分からないと迷ってた。その迷い、説明書を先に渡しておけば半分くらいは消えていく。相手だって、正解の心配の仕方が分かれば案外気が楽になるもんだし。

心配されたい気持ちを隠すんじゃなく、使い方の注意書きを添えて差し出すイメージでね。

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